アーティスト

SGT-DI × イガラシ(ヒトリエ)
~導入ストーリー


2023.08.31

「SVT、B-15の音がどんな状況でも楽しめて、これ一台で間違いなく世界が広がる」

  

骨太なドライブ・サウンドと奔放かつモダンなフレーズで、ヒトリエのエッジの効いたサウンドの根幹を担うベーシスト、イガラシ氏。状況によってAmpegアンプを使い分けるヘヴィなAmpegユーザーとしても知られる氏も、「オールインワン・ベース・ボックス」ことSGT-DIを導入したひとり。ここではSGT-DIのセッティングや歪みへの強いこだわりなど、イガラシ流の使いこなしについて説明頂いた。



SGT-DIをホームレコーディングで愛用

──イガラシさんは真空管アンプからクラスDまで様々なAmpegアンプをお使いですが、改めてその使い分けについて教えてください。
 ライブでは会場にもよりますが、主にフルチューブのSVTヘッド・アンプと10インチ8発のキャビネットの組み合わせを使っています。レコーディングでは、1974年製のB-15Nを愛用していますね。これらに加えて、最近では家でレコーディングをする仕事も増えていて、その時にはプラグイン・ソフトのAmpeg SVT Suiteを使っています。環境によって「Ampeg」を使い分けている状況です。

──ハードウェアからソフトウェアまで使い分ける中で、新しいプリアンプ/DI、SGT-DIはどのような場面で活躍しているのですか?
 どんなシチュエーションでも使えるモデルだと思いますが、今はホームレコーディングで使っています。SGT-DIはライン録音でも非常にアンプライクな音を作れるので、家でレコーディングしなければならないけどアンプライクな音が欲しい時にSGT-DIを、あえてラインっぽい音の方が合う楽曲にはSVT Suiteという感じで使い分けています。

──SGT-DIを導入しての第一印象を教えてください。
 「オールインワン・ベース・ボックス」というだけあって多機能なモデルでありながら、直感的な音作りができますね。自分は先ほど述べたように日常的にAmpegを使っているんですけど、SGT-DIは自分のいつもの音、つまりAmpegの音がします。アンプで演奏している気持ち良さを、そのままラインで味わえるという印象ですね。正直なところ、自分が使用しているSVTやB-15の実機と比較しても、SGT-DIの方が良いと思いますよ。安定して使えて、コントロールの効きも良いですから。実機はもうちょっと融通が利かないんですよ(笑)。もちろんそこも好きで使っているんですけど、SGT-DIは実機の良さをどんな使用環境にも落とし込めるペダルなので本当に使いやすいです。

歪みへのこだわりと、イガラシ流セッティング術

──イガラシさんは普段、歪みをどう作っているんですか?
 足下のエフェクターを踏みっぱなしにしています。それで足りなければ、どんどん歪みのエフェクターを足していくという作り方ですね。SGT-DIはこれ一台でカッコ良く歪ませることができるので、感動しました。

──今回の動画のサウンドも太く、腰がある歪みです。それでいて、イガラシさんのタッチのニュアンスがしっかり出ているのが素晴らしかったです。
 嬉しいですね、そこは大切にしているところなので。自分は歪ませて演奏することが多いのですが、めちゃくちゃに歪んでいても自分のタッチが出せるというのが大事で、そこを両立できていないとダメなんですよ。音に芯がなく、すべてが歪み成分になってしまうような機材だと演奏しづらいですし、音に立体感がなくなってしまいます。SGT-DIはタッチがしっかりと出るので、デモ演奏でも弾いていてすごく気持ちが良かったです。おそらく、プリアンプ部分とSGT回路が分離しているのが良いんでしょうね。プリアンプの素直でクリアな音にSGT回路の歪み成分を加えているので、歪んでいても音の芯の部分が残っています。

──基本的なセッティングはどのような感じですか?
 大枠でいうと、プリアンプもSGT回路もオンで、VOICEスイッチはSVTを選択しています。キャビネット・シミュレーターもオンで、キャビネット・モードは「810」です。自分は、機能やノブの位置から推測して音を作っていくのが苦手で、出音が良いかどうかを判断しながら、直感的に音を作っていきます。普段のレコーディングではB-15を使っていますが、今回SVTを選択したのも、単純にSVTがカッコ良いと感じたから。SGT-DIは一見ノブが多く、複雑に見えるのですが、実はアンプのコントロールとあまり変わらないので、こうした直感的な音作りが可能なんです。

──プリアンプのセッティングや、使い心地を教えてください。
 基本的なセッティングは、VOLが12時方向でCOMPは11時方向、BASSとMID /FREQが12時方向、TREBLEは3時方向、GRIT/LEVELが1時方向です。EQはどのように設定しても破綻しないので使いやすいですよ。特にMID /FREQは、SVTなどの実機ではミッドの帯域をスイッチで選ぶ仕様ですが、SGT-DIではシームレスに操作できるようになっている点が本当に扱いやすいと思います。実機特有のある意味で人を選ぶところが、誰でもより直感的に扱えるようになっていますね。


イガラシ氏所有のSGT-DI。上述しているベーシックなセッティングがこちらの写真からも確認できる。

リアルなキャビネット・シミュレーション

──IRローダー/キャビネット・シミュレーション・セクションについて改めて感想を教えてください。
 実機を使ったことがある人ならみんな納得すると思うのですが、このキャビネット・シミュレーションは本当によく出来ていて、10インチ×8発の「810」、10インチ×4発の「410」、15インチ×1発の「115」などそれぞれの特性がしっかりと出ています。自分の場合、普段使っているSVT-810やB-15に即して選ぶことが多いのですが、「410」もまとまりが良くて使いやすいですよ。それと、SGT回路のVOICEスイッチでSVTを選ぶとキャビネットも「810」、B-15を選ぶとキャビも「115」にしています。これは意図的に狙っているわけではなく、音で判断して自然にこうなるんです。つまり、それだけキャビネット・シミュレーションの出来が良いということだと思います。

──IRローダーはどのように使っていますか?
 エディターをダウンロードして、それぞれのキャビのレベルを工場出荷時の状態から少しだけ調整して、自分がベースを弾いた際に各レベルがなるべく均等になるように合わせています。これによって、例えば録音する際に楽曲を聴きながら、どのキャビが合うか切り替えて選ぶような時に、ストレスなく選定作業ができるようになりました。

──他に気に入っている点がありましたら教えてください。
 やっぱりこれだけコンパクトかつ軽量で、しっかりとAmpegアンプの音が出せるという点は革命的ですよね。実機はとても重たいですから移動やセッティングが大変ですけど、それから解放されます。それと、入出力端子が充実しているのもすごく良いと思います。ダイレクト・アウト端子とライン/ヘッドフォン出力端子にはIRローダー/キャビネット・シミュレーションが効くので、レコーディングや練習に最適です。練習を良い音でできるメリットは、大きいですよ。スルー端子はライブの時の分岐やチューナー・アウトとして便利ですし、プリアンプ・アウトはアンプを用意してSGT-DIをエフェクト・ペダルとして使うときに便利です。
 今後は自宅でのレコーディング以外でも使える場面が増えそうです。今は、ライブでアンプを置かない現場も増えてきているんですよ。そうした状況にあって、Ampegからこうした製品が出てきたことにすごく意味がありますよね。SVT、B-15の歪みがどんな状況でも楽しめる。これで、世界がかなり広がるんじゃないですか。

Ampeg SGT-DI

現代のベーシストが求める音作りを一台で完結できるストンプボックス型のプリアンプ/DI。象徴的なAmpeg SVT®とB15のボイシングを特長とする強化されたSuper Grit Technology™ オーバードライブ回路、スイープ可能なMID回路を備えた汎用性の高い3バンドEQ、ウルトラ・ハイおよび3ウェイ・ウルトラ・ロー・スイッチ、可変コンプレッサー、AUX/ヘッドフォン接続部を搭載。また、Ampeg製品としては初めてIR(インパルス・レスポンス)のロードが可能となり、キャビネット・シミュレーターも搭載している。3種類の定番のファクトリー・キャビネットIR(Ampeg Heritage B-15、Heritage SVT-410HLF、SVT-810 Squareback)から好みのものを選択できるほか、Ampeg IRローダー・アプリを使用することで、最大3種類までキャビネットIRをUSERエリアにあるファクトリー・キャビネットIR(Ampeg SVT-112AV、SVT-210AV、SVT-212AV)と入れ替えて使用できる。
https://ampeg.jp/products/pedals/sgt-di.html


イガラシ(ヒトリエ)
イガラシ(ヒトリエ)
1985年、山形県出身。ヒトリエのベーシスト。2011年にwowaka(Vo, G)、ゆーまお(Dr)とヒトリエの前身となる『ひとりアトリエ』を結成。その後、シノダ(G, Cho)が加入してヒトリエとなり、2014年にメジャー・デビュー。2019年2月までに4枚のフルアルバムを発表したが、同年4月、wowakaが急逝し、シノダがVoを務める3人体制となる。2021年『REAMP』、2022年『PHARMACY』をリリースし、現在も3ピース形態で活動中。イガラシはヒトリエの他、「忘れらんねえよ」などのサポートでも活躍。リード・ベースと謳われる、動きが多く、楽曲をアグレッシヴに彩るプレイに定評がある。
◎ヒトリエ オフィシャルウェブ https://www.hitorie.jp/

取材=井戸沼尚也
動画撮影・編集=熊谷和樹
録音=嵩井翔平
写真=星野俊、Ampeg Japan