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SVT-410HLF × 中村和彦(9mm Parabellum Bullet)
~ライブ導入インプレッション


2022.02.02

「Ampegの音までが自分の責任」

  

タフさとパワーとまとまりの良さ

2021年12月、Billboard Live TOKYOで行われた9mm Parabellum Bulletの2部制ステージは、1部が菅原卓郎(Vo, Gt)、中村和彦(Ba)、かみじょうちひろ(Dr)によるアコースティック・セットの「AC 9mm」、2部はエレクトリック・セットの「9mm Parabellum Bullet」という異なる色彩で開催された。ベーシストの中村氏はこのステージに向け、アコースティック/エレクトリックの両用としてHeritage SVT-410HLFキャビネットを導入。愛用するアンプ・ヘッドSVT 1987 LIMITED EDITIONと組み合わせてさまざまな表情で魅せた。ここではAmpegサウンドを根幹とする中村氏の音作りについて訊く。

──Billboard Live TOKYO公演でHeritage SVT-410HLFを初めて使用されました。主な導入目的はセミアコ・ベースによるアコースティック・ユニット、AC 9mm用だったのでしょうか?

  そうですね。Billboard Live TOKYOでは中音の音量を控え目にするという環境要因もありました。ヘッドはSVT 1987 LIMITED EDITION(SVT-HD)とSVT-VRを使っていまして、時期によってどちらかをメイン、どちらかをサブという感じで、最近は1987 LIMITED EDITIONをメインにしています。

──アンプの役割について教えてください。歪みやコーラス、モジュレーション系など多くのペダルをご使用ですが、アンプ自体はどのようにセッティングしていますか?

   基本はクリーンという感覚で、SVT側のEQはすべてフラット。ボリュームを会場に合わせて調整している感じですね。音色はペダルで作ります。SVTのボリュームはかなり効きが強いというか、繊細なところがあるんですけど、上げていくとつぶれ始めるポイントがあって、そのぎりぎりを狙うんです。突っ込んでいくにつれてミドルの押し出しが強くなるんですけど、その辺の絶妙なラインを探りながらですね。ベースとなるサウンドが良いからこそ、エフェクターの乗りも良くなると思っています。

──「つぶれ始めるポイント」を得やすくするために、100WのV-4Bをチョイスする方もいます。

  ああ、それはわかりますね。自分もV-4Bにめちゃくちゃ興味あります。SVTは、2年近く前に50周年記念モデルを試奏させてもらったときにも同じ印象がありましたけど、まさにオールラウンダーという感じ。一方で、V-4Bはライブ会場の規模を問わずにコントロールしやすそうだなという印象です。

──普段はSVT-810Eキャビネットをお使いですが、Heritage SVT-410HLFの感触はいかがでしたか?

  良い意味で裏切られた感じがあって。イメージとしては、8発から4発に減ることで全体的にまとまりのある落ち着いたサウンドになるのかな?と想像していたんです。まあ、確かにそういう面はあるんですけど、外の音も確認するとわりとタフな音像というか、Ampegらしい部分をしっかり感じられました。会場のいろんな場所でモニターしてみたんですけど、やっぱりタフさとかパワーを感じてこれはすごくいいなと思いましたね。


Billboard Live TOKYO公演で導入されたHeritage SVT-410HLFキャビネット。セミアコ・ベースのウッディなサウンドを演出した。

「810(ハチイチマル)」は四角い面ごと音が飛び出してくるイメージ

アコースティック・セットにおいてピッキングのタッチを狙いどおりに、つぶさに表現できたのには「410」の特長のひとつ、ツイーターに秘訣があったと語る中村氏。足もとでのダイナミックな音色チェンジに加えて、手元のダイナミクス・コントロールを容易にしたその理由とは?

──音量以外の面はいかがでしたか?

  聴こえ方は確かに変わるんですけど、それはポジティブな意味での変化でしたし、そういう部分を楽しみながら音作りができました。スピーカーはカスタム・エミネンスということで自分が使っているSVT-810Eのそれとも違うと思いますが、レスポンスが良かったですね。アコースティックもエレクトリックもどちらも使ったうえで「違い」がわかりやすく表現できて、特にアコースティックではピック弾きとか指弾きとかいろいろな奏法に狙いどおり反応してくれて。

──中でも親指弾きのサウンドがウッディでいながらモダンで、音の立ち上がりやこすれる音までつぶさに再生していましたね。

  そうなんですよ、親指のニュアンスがかなり良くて。アコースティック・セットを表現するのに向いているキャビだなと感じました。それと810との差という面で、ツイーターを結構活用したんです。外音用のマイクは立てていないんですけど、モニタリングのしやすさや補正という意味でかなり有効でした。810よりも音量が出ない分、背中で感じる音圧も少なくなるんですけど、その代わりに「速い」というか、タッチに対してダイレクトに発音してくれて。ツイーターのレベルを(背面のコントローラーで)上げめにすることで、すごく気持ち良くモニターできましたし、タッチにも良い影響が出ましたね。マイクを立てないので、外音に影響しない分いじり放題というか(笑)、410だとそういう使い方もできるんだなと。ここはPAさんとも相談しながら気づいた点でもあります。

──810と410の挙動の違いを、レスポンスの速さと高域コントロールに感じたんですね?

  そうですね。一方で810が遅いと感じたこともなくて。自分の中ではスピーカーが8発あるという感覚ではなくて、四角い面ごと音が飛び出してくるイメージなんですよね。抽象的な話なんですけど、独立してスピーカーが鳴っているんじゃなく、塊になって飛び出してくるというか。そういう一体感が810の良いところだなと理解してます。それで、他社製ですけどツイーター入りのキャビは以前にも所有していたことはあるんですけど、ツイーターは全然使ったことがなくて。自分にさほど必要だと思わなかったんです。その点、SVT-410HLFにはスピーカーの個性を感じつつ、ツイーターを使うことで新しい発見がありましたね。特にアコースティックの音作りはエレキとはまったく別の切り口だったのですごく新鮮で、そういった気持ちがツイーターを試させたのかもしれないです。


10年ほど前からSVT 1987 LIMITED EDITION(3段あるうちの一番下)をメインに据え、その際にバックアップとしてSVT-VR(同中央)も導入。メイン/バックアップの関係を入れ替えながら両SVTヘッドを愛用してきた。

Ampegの音までが自分の責任

バンドマンとしてベースを担う中村氏はこれまでもたびたび「すべての環境でアンプ中心」と語ってきた。利便性のみにとらわれることなく、初めて大型アンプで発音したときの感動と初期衝動が今なおその原動力になり、「9mm」の屋台骨となっている。活動の核としてAmpegが担う部分について、改めて問うと……。

──アコースティック・セットだけを考えますと、キャビネットは15インチ1発にしても良さそうですね。

  はい、実は持っていて、AC 9mmでも使っているんですけど、インピーダンスが8Ωなんですよね(笑)。SVTとはインピーダンス・マッチングの都合で見送ったなかで、4発4Ωはどうだろう?と。今回はアコースティックとエレクトリックの両方という特殊なステージだったので。それで実際にHeritage SVT-410HLFをライブ導入してみて、どちらの場面でもすごく扱いやすかったという印象ですね。

──Billboard LIVEでの一部(アコースティック)、二部(エレクトリック)で、SVTヘッドのセッティングはどう変わったのでしょうか?

  エレキはいつもどおりなんですけど、アコースティックのほうはチャンネル1だと音圧が強すぎたので、チャンネル2で音作りしました。音圧的にもけっこう収まりが良い感じになりましたね。

──以前から中村さんは「レコーディングやライブでの音作りもアンプ中心」と発言されています。外音のラインとの割合はどの程度なのでしょうか?

  外音はPAさんにお任せすることが多いのでその辺はなんとも言えないんですけど、簡易的なアコースティック・ライブではマルチエフェクターを経由してラインだけでやることもあります。ただ今回に関しては、キャビネットの出音も気に入っているとコミュニケーションしていたので、マイクの音も混ぜながらだったと思います。

──モニターはどうしていますか?

  ベースの音で自分が聴いているのはアンプの音だけです。

──中村さんがアンプを、Ampegを使う意義とは?

  アンプ……Ampegを含めて自分の音、そういう認識がもともとあるというか。初めてアンプから音を出したときの感動だったり、興奮というのは誰しもが感じたことだと思います。そういう気持ちの部分をすごく大事にしてるので、利便性だけで考えたらいろんな方法があると思うんですけど、やっぱりアンプの音までが自分の音と捉えるのが、ベースを弾いてきたなかで自然になっていますね。

──9mm Parabellum Bulletという核になるバンドがあるからこそ、アンプを使う意義もはっきり見えてきますが、例えば、サポートという立場だったらいかがでしょう?

  確かに、それはいろんな状況に応じた機材環境というのが考えられます。ただしバンド・サウンドにはバンドの、そしてメンバーそれぞれの責任があるので、自分のなかではアンプの音までが自分の責任と認識していますね。そのファーストチョイスがAmpegのSVTです。これまでいろいろなアンプを実際に購入して試してきたんですが、なかにはライブ中に熱くなり過ぎると保護回路が作動してゲインが下がるモノもあったんですね。その点、SVTはガンガン突っ込んでも余裕で応えてくれるので(笑)、まさしく心配要らず。「任せられる」アンプですね。


Ampeg Heritage SVT-410HLF詳細
https://ampeg.jp/products/heritage/svt410hlf/


中村和彦(9mm Parabellum Bullet、AC 9mm)
1984年、宮城県出身。9mm Parabellum Bulletのベーシスト。同バンドは2004年に横浜にて結成され、2007年に『Discommunication e.p.』にてメジャー・デビューを果たす。最新作は2021年7月に配信リリースした「泡沫」。また、派生プロジェクトとして菅原卓郎(Vo,Gt)、かみじょうちひろ(Dr)、中村によるアコースティック・ユニット「AC 9mm」を2018年に始動させ、往年の名曲をジャジィにアレンジするなど多彩な表情を見せている。
◎9mm Parabellum Bulletオフィシャルウェブ:https://9mm.jp/


写真=西槇太一